酸素療法の一般的な高流量システムとHFNCの違い

NT

CCRIのHPのお問合せからご相談をいただきました。
相談者(看護師)の方の同意を得て、ご紹介させていただきます。

酸素療法の一般的な高流量システムの総流量表では、混合ガス流量が40L/分など記載されていますが、HFNC(ハイフローネーザルカニューラ)の流量と何が違うのか教えてほしいです。HFNCで酸素配管のみのタイプでしたら、お互いにベンチュリー効果を利用しているとなれば一般的な高流量システムでもHFNCと同様に高流量で洗い流し効果など期待できると思いました。しかし、一般的な高流量システムで実際に口元に流れてる流量はせいぜい15L/分と聞いたことがありました。

ご質問ありがとうございます。以下に回答させていただきます。

一般的な高流量システムとHFNCの違い

HFNCと一般的な高流量システムと違いは主に以下の5つです。

  1. 高濃度酸素の安定供給
  2. 加温加湿による気道のクリアランス
  3. 解剖学的死腔のウォッシュアウト
  4. 少量のPEEP効果
  5. 上気道抵抗の軽減
NT

この違いが可能になるのは、以下によるものです。

1.高濃度酸素の安定供給

一般的な酸素療法の酸素流量は15L/分に対し、HFNCでは60L/分まで可能です。Ⅰ型呼吸不全の急性増悪時でも、吸気流量はmax60L/分程度と考えられているため、100%に近い酸素濃度投与が可能となります。

2.加温加湿による気道のクリアランス

HFNCは、人工呼吸器と同じように回路も加温されているため、生理的な気道粘膜と同等の加温加湿環境が提供できます。気道の線毛層の上は粘液層で覆われ、異物等を体外へ排出します。乾燥は粘液層を損失させるため、十分な加湿は粘液層を守り、クリアランス機能を維持します。

3.解剖学的死腔のウォッシュアウト
4.少量のPEEP
5.上気道抵抗の軽減

これらは、HFNCがマスクでなく経鼻カニューラであることで可能にしています。高流量のガスも、マスクでは口腔や大気に拡散され、流量(供給量)は低下します。ところが経鼻カニューラであれば、鼻腔という狭い腔に直接流れるため、流量(供給量)が低下しません。これにより3~5の効果が期待できます。

一般的な高流量システムも経鼻カニューラに接続すれば3~5の効果は期待できるかもしれませんが、製品を創意工夫してはいけませんし、1~2の効果は得られません。

一般的な高流量システムでは、実際に口元に流れてる流量はせいぜい15L/分なのか?

高流量システムの総流量表の値は、概ねの値であり絶対値ではありませんが、実際量が15L/分ということはないと思います。一般的な高流量システムで酸素濃度100%、酸素流量15L/分にした場合、外気を取り込みませんから15L/分しか流れません。その流量と総流量表30L/分以上の設定にしたときでは、あきらかに多く流れていますよね。人間の換気量は毎回変わるのですから、デバイスからの流量も絶対である必要はありません。それよりも、そういうものだと認識して、患者の状態から適切な酸素設定を考えていくことが大事なのだと思います。

NT

以上、参考になれば幸いです。
学べば学ぶほど、いろいろな疑問がでてくるものですよね。
これからも、ぜひ一緒に考えさせていただきたいと思います。

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