コンピテンシーを育む
病院組織という社会の中で看護という仕事を専門家として遂行するためには、病院組織が社会に対して組織が持つミッションとコミットメントについて理解し、個人に求める、求められる役割と能力が何であるかを教育指導者(支援者)と学習者は認識する必要があります。
それには、学習者が有する知識、技能、態度だけではなく、興味、関心、好奇心、欲求、感性などを含めた総合力によって、自己課題に対応する能力(コンピテンシー)を育むことを意識して教育指導することを心がけたいものです。
キーワードは「考える力」
では、このような能力を養うキーワードは「考える力」です。学習者が持つ1つ1つの能力をつなぎ合わせながら総合的に考察し、判断することへの刺激をすることが大切です。多様な状況における多重課題への適応などは、この能力が不可欠だと思われます。道具、データ、情報、言語、記号、技術などを相互作用的に整理して活用する能力、つまり様々に発生する事象と事象を文脈的に理解できること。
また、自らの権利や利害、限界、ニーズを明らかにして他者へ伝える能力、つまり意志決定、自らの欲求や要求を実際の活動に置き換えることなどの自律的活動の能力です。
さらには、他者と良好な関係を作る力、協力する力、争いを処理解決する力(対立を調整し解決する力)、つまり他者と共に学び、働き、円滑に交流する力です(社会性)。
組織のエンゲージメントが重要
何れにせよ、一人ひとりの成長を支援する組織は勿論のこと、その支援を担う人々が被支援者の成長を支援し、被支援者自身も、成長機会を生かしている状態が不可欠です。
ここで言うところの成長とは、単なる昇進を主体としたキャリアアップではなく、また専門知識やスキルを身につけるだけではなく、それを支える多様な経験・学びを成長のモチベーション・チャンスと捉えて、被支援者一人ひとりの成長に生かす支援を行うことです。
極めて重要な点は、被支援者がありたい姿を自分でデザインし続けられることを支援できる組織のエンゲージメントもまた育まれていくことだと思います。
第6回に続く