Critical Care Research Institute

AIRVO2の使用酸素濃度計算表(理論値)のみかた

NT

CCRIのHPのお問合せからご相談をいただきました。
高流量鼻カニュラ:HFNCのAIRVO2(Fisher & Paykel Healthcare社)を使用している施設では、同じような疑問を持たれることもあると思います。相談者(看護師)の方の同意を得て、ご紹介させていただきます。

NHFの設定および酸素投与について使用酸素濃度計算表を使用し管理しております。 その管理表内の数値で、Fi02 60%で Fiow30で「61」 や、Fi02 60% でFiow40で「74」である根拠を教えていただけないでしょうか。

以下に回答させていただきます。

正しい用語の解説 #1「呼吸機能を表す記号」

質問に答える前に老婆心ながら、正しい用語の解説です。呼吸機能を表す記号には、意味があります。1次符合は大文字で書かれ、何を見ているのかを示します。ガス濃度はF(fractional concentration)、分圧はP(partial pressure)となります。

2次符合は部位を示す符合で、気相は大文字を小さく液相は小文字で書くことになっています。吸入気は I(inspiratory gas)で気体なので大文字ですから、Fi02ではなく、Iは大文字で下付きが正しく、FI02となります。

なお、空気を吸入する場合のFI02はおよそ0.21、純酸素を吸入する場合のFI02は1.0と表現するため、FI02 60%ではなく、FI02 0.6が正しいです。

正しい用語の解説 #2「商品名と一般名」

NHFは、Fisher & Paykel Healthcare社のネーザルハイフロー(NHF)で商品名です。NPPVを商品名の「バイパップ」と呼ぶのと同じようなことです。

一般名は、「高流量鼻カニュラ」ですので、「High-flow nasal cannula:HFNC」となり、学術誌などでも「HFNC」が多く使用されています。

もう少し付け加えると、HFNCは器具名、治療法はこれに酸素療法を付けて「High-flow nasal cannula oxygen therapy:HFNCOT」となるようです。なお、診療報酬算定要件の名称としては、「ハイフローセラピー」が用いられています。

回答

 FlowNOTE:For perfect world使用酸素濃度計算表(理論値)
スクロールできます
O2
Flow
251015202530354045505560
161372926252426232323232222
2100533732292726262525242424
3100684537333329282726262525
4100845342373432302928272726
51001006147413734323130292828
1010010010074615347444139373534
15100100100100806861555147454341
201001001001001008474666156535047
2510010010010010010087777065615754
30100100100100100100100898074686461
351001001001001001001001009082767167
4010010010010010010010010010091847874
45100100100100100100100100100100928680
501001001001001001001001001001001009387
5510010010010010010010010010010010010093
60100100100100100100100100100100100100100
※ AIRVO2の酸素濃度の設定は実測で行います。
NT

上の表は、相談者から添付されたものをなるべく忠実に再現して作成しています

表のみかた
  • 表の縦 O2 Flow(黒地に白文字)は、実際に流す酸素流量です。
  • 表の横 Flow(青地に黒文字)は、設定する目標流量です。
  • 表の羅列されている数字は酸素濃度です。つまり何%の酸素濃度にしたいかです。
AIRVO2はベンチュリ効果を使用している

HFNCには、圧縮空気の配管接続が必要なものと、不要なものがあります。圧縮空気の配管接続が必要なものは、流量:何L/分、酸素濃度:何% を設定します。圧縮空気配管からの空気と酸素を、その設定流量と酸素濃度になるように混ぜてから流してくれます。

AIRVO2は、圧縮空気の配管が不要なタイプなので、空気はベンチュリ効果を使用して、外気を引き込むことで酸素濃度を調整します。ベンチュリ効果とは、流れの断面積を狭めて流速を増加させると、圧力が低い部分が作り出されることをいいます。

その結果、流れの速い気体は、周りの気体を吸い込みます。AIRVO2はこの原理を応用し、酸素の流速を利用して、空気を吸い込んで、酸素濃度を調整します。

使用酸素濃度計算表は理論値

使用酸素濃度計算表にも書いてありますが、「※AIRVO2の酸素濃度の設定は実測で行います」。例えば、設定流量を60L/分(表の横)で、酸素濃度を74%にしたいとなったら、酸素を40L/分(表の縦)流せばよいということになります。ただ、あくまでベンチュリ効果を使用しているので、空気の吸い込み量が一定しないため、表は「理論値」であり、実際の酸素濃度は理論値通りの値にはなりません。

したがって、酸素濃度の調整は、AIRVO2本体のディスプレイに表示されている酸素濃度(緑の数字)を見ながら、流量計を回して調整する方法が、現在はメーカーから推奨されています。

「使用酸素濃度計算表」は現在のAIRVO2の操作ガイドには掲載されていません(最新の操作ガイドなどの資料が必要な場合は、Fisher&Paykel Healthcare株式会社営業担当者、または本社へご連絡ください)

なお「使用酸素濃度計算表」内の❝perfect world❞という表現が気になったので確認したところ、不明だそうです。

設定酸素濃度と吸入気酸素濃度

通常の高流量酸素システムでも同じですが、設定酸素濃度と吸入気酸素濃度は異なります。設定目標流量を30L/分(表の横)で、酸素流量(表の縦)を30L/分に設定すれば、当然酸素濃度は100%になります。

つまり、設定流量(表の横)と酸素流量(表の縦)が同じ、または設定流量より酸素流量が多ければ、すべて100%になります。表の100(%)と書いてあるところです。表の100(%)の設定にすれば、HFNCから出てくる酸素濃度は100%ですが、実際の患者がそれ以上に吸気流量がある場合は、当然外気を吸うため、吸入気酸素濃度は下がります。

たとえば、設定目標流量を30L/分、酸素流量を30L/分で、酸素濃度100%にしても、患者の吸気流量が40L/分だったら、残り10L/分は21%の空気を吸うため、当然酸素濃度は100%にはなりません。

しかし、患者の吸気流量を測定することはできませんし、呼吸毎に変わります。目標酸素濃度で投与したいのならば、患者の吸気時に外気を吸い込んでいないか、患者の鼻の横に手を当てるなどして確認する必要があります。吸気時にも鼻の横からHFNCからのガスが漏れ出ているようであれば、患者の吸気流量以上の流量である可能性が高いため、目標酸素濃度を投与している可能性が高くなります。あとは、SpO2の変化やPaO2などで評価するしかないと思います。

NT

以上、参考になれば幸いです。ご相談いただき、ブログへの掲載も快く承諾してくださりありがとうございました!
みなさまからも臨床での問題など、ご相談いただけるとありがたいです。タイムリーには返せないかもしれませんが、一緒に考えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

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