CCRIのHPのお問合せから、3回目の相談をいただきました。
SpO2が低い患者に、左右どちらの側臥位にしたら、SpO2が改善するのか。日々、悩まれている方も多いと思います。相談者(看護師)の方の同意を得て、ご紹介させていただきます。
体位によってSpO2が変化するのは、換気血流不均等が原因
体位によってSpO2が変化するのは、換気血流不均等が原因と考えられます。換気が十分にある肺胞に血流が多いと、酸素化(SpO2)はよくなります。しかし、換気が少ない肺胞に血流が多い、または換気は多いが血流が少ないと、酸素化が悪くなります。生体には重力が影響するため、下側のほうが血流は多くなり、上側のほうが換気は多くなります。
これを基本に考えれば、肺胞が障害されていない側(換気ができている側)を下にすることで、換気と血流が均等になるため、健側を下にした側臥位の方が酸素化はよくなると考えられます。一方、気胸の場合は、健側肺への圧迫を考え、患側肺を下にすることで酸素化がよくなると考えられています。
ここまでが教科書的な解釈です。
病変別の体位
ここからは私見も含めます
まず気胸に関してですが、健側肺を圧迫するほどの気胸ということは、緊張性気胸であると考えられ、縦隔が圧迫されショックに陥る可能性が高いと思います。そうであれば、胸腔ドレナージが必要であり、ドレナージされれば健側肺の圧迫は解除されます。
また胸水に関しては、教科書どおり健側が下のほうが酸素化の改善が図れると思います。患側の胸水が健側肺に流れ込むことを懸念しているのであれば、そんなことはありません。胸水は胸(膜)腔に液体が貯留しており、左右の胸腔は交通していません。なお、肺炎であれば気管は左右交通しているため、患側が上だと分泌物が下方に流れ、健側肺に垂れ込む可能性があります。
しかし、逆に体位ドレナージはそれを狙っており、肺炎患者では患側を上にした体位を取ることが多いと思います。ただし、胸郭が軟弱な新生児や小児は別に考える必要があります。健側肺を下にした場合、胸郭が軟らかい故に、患側肺が健側肺を圧迫し、酸素化が悪化することを考慮する必要があります。
もとの肺の状況も考える
もともとの健側肺の状況も考える必要があります。健側肺が、肺切除をしている、肺結核で線維化しているなど、健側肺の酸素化能がもともと悪い場合は、健側肺を下にしても酸素化の改善は望めません。
さらに、胸部外傷で肺挫傷がある場合など、治療方針として出血が止まるまで患側肺を下にして血液が健側肺に流れ込まないようにすることもあります。
臨床では、教科書通りの方ばかりではありません。原疾患や既往、治療方針などから多角的にアセスメントし、あとは実際の血液ガスや自覚・他覚症状から判断していくしかないと思います。
以上、参考になれば幸いです。ご相談いただき、ブログへの掲載も快く承諾してくださりありがとうございました!
みなさまからも臨床での問題など、ご相談いただけるとありがたいです。タイムリーには返せないかもしれませんが、一緒に考えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。