新人教育 #6「教育指導(学習支援)の基本的スタンス」

学びの責任は学習者自身にあり

学習者(被支援者)は組織の一員として真っ当な仕事するために義務と責任において自身の学習が存在していることは大前提だということを強調したいと思います。基礎的な学習や関連分野の幅広い意味ある手掛かりを示した文献をはじめとした知見などを渉猟することは新人看護師から当然行う業です。

学習支援のスタンス

さて、そこで学習者の支援者である教育指導者は、どのようなスタンスにあればよいかと言いますと、一様の答えなどはありません。ただ、新卒看護職員の職場定着を困難にしている要因として

  1. 基礎教育終了時点の能力と看護現場で求める能力のギャップ
  2. 現代の若者の精神的未熟さや弱さ

これらが上げられているのを見ますと、答えなどさらにないように感じてしまいますね。しかしどうであれ、被支援者への学習支援は一般的には以下の事柄のような見解が多いように見受けられます。

  • 権威主義的に学習を強要しても、成人は服従しない
  • 学習者の尊厳とプライドを否定しない
  • 学習支援者と学習者(被支援者)の協力のもとに学習活動を進める
  • 学習目標の設定や学習計画の策定にあたって、成人学習者の自主性を重んじる
  • 学習支援者は被支援者が一人の成人学習者であることを認識すべし
  • 頭ごなしの否定や批判は、学習者の自尊心を傷つけ、学習意欲の低下を招く
  • 自分の意見とは異なる見解や提案に対していったんは肯定的に受け止める度量が、成人学習の指導者には不可欠な条件である

わたしはこれに加えて、一般的に高く評価される「励ます・ほめる指導スタイル」ばかり一元的にするのではなく、できれば対等な関係性に立ち「学習スキルアップを促す指導スタイル」のスタンスを取りつつ、被支援者は自らが学びの主人公であり、自己の学びに責任と自律性を持つべくことを認識して頂くよう関わるべきと考えます。

くれくれ星人とくれない族への対応は責任を持たせること

一方、時々質問されることが少ない「くれくれ星人とか、くれない族」に関して触れておきます。このような方々に概ね共通していることは、自己肯定感が低く、承認欲求が高いことです。また、他者への依存心が高いのも特徴です。

その一方では、実は無関心であることも少なくありません。しかし無関心にも関わらず、他者から何かを与えて欲しい感情が強いという、言わばアンバランスな構造が存在します。これは、ある種の稚拙とも言える感情です。

このような方には、その方の周りの人々が、その方の成果に大いに期待をするような成果物が発生するタスクについて、間を置かず提供してあげることです。そのタスクには必ず責任が伴っていることを原則条件にすることです。その結果、タスクの成果があった場合、またその過程において大いに承認することです!

新人看護師はモラトリアム

新人看護師と言われる多くの人々は、被支援者として仕事を介した社会的責任も同時に学んでいる世代です。心理学においては「大人になることへの猶予」をモラトリアムと呼んでいます。このモラトリアムということばが提唱されたのは1959年だそうです(発達心理学者:エリクソン)が提唱しました。

それによると、人間というものは生涯を通じて発達していく生き物であるとし、青年期から成人期にシフトしていく時期をモラトリアムと定義付けしています。青年期が終わる時期には大学、または専門学校を卒業し社会に出ていく人が多いでしょう。このモラトリアムの期間は、アイデンティティ(人格における存在証明または同一性)を確立し、社会的責任を担う準備をする時期であると言えます。このことも学習支援者は理解して支援することも大切だと思います.

おわりに

自分で考え学ぶことは、受身で教えてもらうよりも、ずっと効果的です。一律に皆で同じことを同じように学習するのはもう流行りません。学習の仕方は学習者それぞれで異なります。

看護師を続ける以上、学習を続けることが不可欠です。受身の学習からは訣別してもらいたいものです。自分自身で学習すべき課題を見出し、積極的に周囲のちからを借りてゆく自己教育へと導くことができたらと切に思います。

YM

この記事を書いた人

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!